顕微鏡組織の一例(組織の説明用)【解説:第一鋼業 野中】

倍率は約400倍程度です(正確ではありません)

マルテンサイトマルテンサイト組織:

0.8%Cの炭素工具鋼の水焼入れ組織でナイタール(硝酸アルコール)で腐食しています。


焼入れ温度が適正であればこのような均一組織となり、64HRC程度以上の硬さが得られます。

かなり冷却が速くなければこのような均一の組織は得られません。
マルテンサイトは細かく、針状です。


マルテンサイトと残留オーステナイトマルテンサイトと残留オーステナイト

1.1%Cの炭素工具鋼を通常の焼入れ温度よりかなり高い温度(1030℃)から水焼入れした組織で、同様の方法で腐食をすると、組織は粗く、未変態の残留オーステナイト(白い部分)が多く見られます。

焼戻しをしますと一部がマルテンサイトになる場合もありますが、粗くなった組織は改善されないために、変形や硬さムラの原因となり、最高硬さも低下します。


マルテンサイトと球状セメンタイトマルテンサイトと球状セメンタイト

上記と同様のものを適正焼入れ温度で水焼入れした組織です。

C量が飽和している「過共析鋼」のために、未溶解の炭素は白い粒となって見える炭化物(セメンタイト:Fe3C)となって残ります。

硬さは65HRC以上ありますが、厚さが10mm程度以上の品物では、冷却が遅くなるので、内部は不完全焼入れとなり、硬さも低下し、組織も変化します。

SLDの低温焼入れ組織SLD(日立金属)の低温焼入れ組織

適正焼入れ温度は980-1050℃とされていますが、これは900℃の組織です。

極端に低い温度や不十分な温度保持がなければ、炭化物(白い塊)が十分に溶け込まずに硬さが低くなり、炭化物量も適正温度での焼入れよりも多いために、素地(マトリックス)強度が低くなります。


SLDの適正焼入れ組織SLDの適正温度での焼入れ組織

1000℃からの焼入れ組織です。

一般的には、適正温度範囲内で、低めの温度をとることで「じん性」が高くなり、高めの温度では「耐摩耗性」が増す傾向になります。
焼戻し温度によって硬さは調整できますので、見えない部分である焼入れ温度の取り方は大切だといえます。

焼入れ状態の硬さは64HRC以上あります。

白い粒は、鋼塊をつくる際に溶鋼が凝固する際にできた「共晶炭化物」と呼ばれるもので、これが非常に硬いので高い耐摩耗性を付与します。


SLDの過熱(高温)焼入れ組織SLDの加熱組織

1100℃からの焼入れ組織です。結晶粒が粗大化し、残留オーステナイトによって、白い組織が見られますが、正常焼入れ組織に比べて2-3HRC硬さが低下していますし、じん性値も低くなります。

一度高温に過熱したものの組織を改善することはできないので、焼入れ温度には注意する必要があります。


これらの顕微鏡写真は下記より引用させていただいています。
写真の一部を使用していますので、元本の倍率とも異なっています。
組織の説明のみに使用していますので、詳細は原本を確認ください。

【引用】
上3枚 山本化学研究社 S47年 改訂4版 標準顕微鏡組織 第1類
           標準片番号 6・11・12

下3枚 日立金属株式会社 型録番号 HY-B6-c P.17

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