日立金属(株)のカタログ「YSS冷間ダイス鋼 SLD」(型録番号 HY-B6-c P.22-23)から引用。


【解説】
この資料は、昭和40年代を偲ばせてくれる大変思い出深いものです。
当時は温度計測設備も不十分で、「自動温度制御付きの炉」と言われていても、総合温度精度(熱電対や計器類を含んだ精度)は2%程度の不確かさがありましたし、温度分布も今と比べて、かなり大雑把だったことを記憶しています。
しかし、多くの鋼材の焼入れ温度は±20℃ぐらいの誤差でもあまり気にかけていなかったようです。
この頃には、作業者の中に「計器より自分の目が正しい」という「匠」が数人いましたし、私のような駆け出しの「ど素人」が温度計を持って測っても、彼らの技量には舌を巻く状態でした。
これらの図表は、今の若い人たちには通じないかも知れませんが、捨てたたばこの温度がかなり高いことや、切削加工された切り粉が300℃近い温度になっていること、ツバをかけたときにジュッとなるのは、温度の高い証拠・・・を納得させるのには説得性がありますし、何しろ、五感によって、温度が分かる素晴らしさがあります。
図を見ていくにあたって、第28図は、周囲の明るさに非常に影響されますので注意が必要です。第32図は鋼種によって温度が幾分ずれることもあります。また、この印刷では若干全体が赤みがかっていて「青さ」が出ていないようにも感じていますが、この写真を、イメージとして記憶しておくと、何かの折に役に立つと思います。
私は、焼き戻し色(テンパーカラー)については、200℃付近で黄土色、300℃付近で青色、それ以上で褐色・・・という感じで見ていますが、横に書かれた表示も含めて、「感覚的に見る色」という程度に用いるのがいいように思います。そして、その着色は時間が経過すると高温側へ移行しますので、その温度になった時の判定色と考えてください。
日立金属さんは主要汎用鋼であるSLDのカタログに(今でも?)掲載されているのは、私が感じる思い入れ以上の何かがあるのかもしれません。これを貴重な資料として引用させていただき、後世にも引き継いでいきたい気持ちでおります。
(第一鋼業 野中豊)